漢方薬とは
病院で処方される薬は西洋医学に基づいており、症状のある臓器や部位などにアプローチして比較的短期間に改善させることを目的に処方されることが多くなっています。漢方薬は病気や不調の原因を取り除いて自然治癒力を高める体質改善によって根本から解決することを目的としたものが多くを占めます。ほとんどの漢方薬に即効性はありませんが、服薬を続けることで体質が改善して症状も少しずつ緩和していきます。
漢方医学は、中国の伝統医学である中医学が5~6世紀頃に日本に伝わり、日本で体系化された医学です。漢方薬の原料は現在も中国原産が多くなっていますが、中国で作られた薬は中薬と呼ばれ、漢方薬とは異なります。ただし、漢方医学は中医学が基礎になっていますので、適切な処方のためには中医学を学ぶ必要があります。特に、西洋薬と漢方薬を併用する場合には、西洋医学と東洋医学のどちらにも精通していることが不可欠となります。当院では、西洋医学と東洋医学に精通した医師がすべての診療をおこなっていますので安心して御来院ください。
西洋薬と漢方薬の違い
一般的に用いられている西洋薬は、有効成分だけを取り出してつくられています。西洋薬は臨床試験を行って効果のあることが証明されていて、安全性や副作用なども公開されています。比較的短期間に効果を得られるものが多く、病名がわかっている場合には特に有効です。効果が高いことで副作用が出やすい場合もありますが、そうした際にも適切な対処法などがわかっており、経過を観察することで安全性の高い処方が可能になります。
漢方薬は植物などからつくられる生薬が原材料であり、生薬を何種類も配合してつくられています。体質改善と自然治癒力向上を目的とした処方であり、原因がよくわからない慢性疾患や心因性の症状にも効果が期待できます。ただし、効果が出るまでに時間がかかるものが多くなっています。
漢方薬は万能薬ではありません
漢方薬は誤解されやすく、中でも「漢方薬には副作用がない」と思い込んでいる方は少なくありません。漢方薬にも副作用が出ることはあり、体質などに合わせた処方をしないと効果が得られない・逆効果になることもあります。ただし、西洋薬と比較した場合、正しく処方することで副作用の程度が軽く、出にくい傾向があるとされています。
西洋薬と漢方薬にはそれぞれメリットとデメリットがあり、効果を得やすい症状や疾患などにも違いがあります。また、患者さまの症状や状態、体質などによっても相性が変わってきます。より負担が少なく最大の効果を得るために、西洋薬・漢方薬のどちらか、あるいは併用するなどの選択肢から適切に判断して処方することを当院では重視しています。
漢方精神科
現在は漢方薬が多くの診療科で処方されることが多くなってきており、漢方外来も増えてきています。漢方は心因性の症状にも有効であることから、当院では漢方精神科の診療を行っています。
ストレスを原因として起こる頭痛、首・肩・背中のこり、動悸、息苦しさ、めまい、不眠、下痢・便秘などの症状は、内科的な西洋薬による治療では解消できない場合も多くなっています。そうした際に漢方薬による治療で効果を得られることがよくあります。
漢方医学では、病気や不調の原因を「気」「血」「水」の乱れと考えて全人的にアプローチしますので、複数の症状がある場合や、イライラ・焦り・不安など気持ちの症状がともなう場合も効果が期待できます。自律神経失調症をはじめとする疾患による幅広い症状には西洋薬よりも相性がいいケースが多いとされています。
ただし、特定の強い症状がある場合や疾患によっては西洋薬の処方が不可欠なケースもあります。西洋薬と漢方薬のどちらを使うか、または併用するかを慎重に見極めて処方することが漢方精神科では特に重要になります。当院では西洋医学と漢方医学の研鑽を積んだ医師が診療しています。患者さまのお話をじっくりうかがった上で、漢方薬を含めた薬の処方についても患者さまと相談しながら決めていきますので、安心して御相談ください。
漢方薬も保険適用されます
当院では、健康保険が適用されるエキス剤の漢方薬を処方しています。エキス剤は、生薬を煎じて抽出したもので、粉薬・錠剤・カプセルなどがあります。そのまま水などで服用できますので、煎じる手間がなく、外出時にも服用しやすくなっています。
御来院いただいた後の注意点
漢方薬は基本的に、空腹時に内服すると効果が出やすいとされています。食事の直前直後、最中などの内服では、効果が減弱すると言われています。食事の30分前や食間など食前直後を避け、空腹時に内服してください。また、飲み込む際の液体は何でもよく、お湯に溶かし、水で薄めて飲む、ココアなどと一緒に溶かして飲む、ヨーグルトやゼリーにくるんで飲むなど、飲みやすい飲み方で内服してください。いずれにしても、副作用に注意しつつ効果の最大限の発揮を目指すためにも患者さま御自身にも継続内服の御協力をしていただくことが必要です。