うつ病とは
うつ病は、脳神経細胞の間で情報を伝達するセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなどの物質が不足することで脳の機能障害が生じて発症すると考えられています。
症状としましては、特に理由がないにもかかわらず、精神活動が停滞し、意欲低下・集中力の低下・興味がなくなるなどがみられます。患者さまの症状により、うつ病と診断される場合と、うつ状態と診断される場合がございます。この2つは症状の程度で分類されるため、厳密に鑑別することはとても難しいです。従って、治療を継続しつつ症状を見極め、適宜診断をおこない、必要時には治療を変更していくことが大切です。
診察は、現在の状況と今後の目標を患者さまの御希望に沿って決定し、日常生活での点や障害の有無、再発防止の対応などを一緒に考えてまいります。
うつ病は早めに治療を開始することで、治療効果を得られることが多いです。
当院では、世界的標準治療に準じた化学生理学的治療である抗うつ薬を用いた薬物療法だけでなく、漢方薬治療も適宜併用しており最適な治療をご提案いたします。また、御希望があれば専属医師による電気生理学的治療であるTMS治療の施行もおこなっております。さまざまな治療法をご用意し、患者さまに合った治療をご提案いたしますので御安心ください。気になる症状などがございましたらお気軽に御相談ください。
うつ病の症状
うつ病の症状は、憂鬱な気分が続く、意欲の低下、集中力の低下、以前まで興味があったことにも興味がなくなるなどがみられます。
下記のような症状に心当たりがありましたら、早めに御相談ください。
感情にあらわれる症状
- 持続する気分の落ち込み
- 理由もなく、寂しい気持ち
- 虚無感を感じる
- 1日中憂鬱な気分が続き、それが2週間以上継続する
- 無力感や自分に自身がなくなる
行動にあらわれる症状
- 何に対しても興味がなくなる
- 以前まで楽しめていたことも楽しめなくなる
- 気力が湧かない
- 集中力や思考力が低下する
- 過度に疲れやすくなる
- 判断力や決断力がなくなる
身体にあらわれる症状
- 理由もなく食欲が減退する
- 夜中に目が覚めてしまう
- なかなか寝付けない
- 身体不調があるが、検査しても異常が見つからない
※感情と行動の症状がある場合には、うつ病が疑われます。身体症状がある場合、身体科を受診して原因がわからない場合はうつ病の可能性があります。
うつ病の原因
気持ちの落ち込みや意欲低下などの症状から気持ちの弱さが原因になると誤解されやすいのですが、うつ病は脳の機能障害によって生じているという説が有力です。脳は情報を伝達する際にセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなどの物質が使われています。うつ病はこうした神経伝達物質が不足することで機能障害を起こしている状態です。気力で治そうとしても逆効果になり、悪化させてしまうことが多いため、注意が必要です。
適切な診断と治療で改善できる病気ですので、「もしかしたら」と感じたら早めに御相談ください。
うつ病の治療
症状だけでなく、背景や環境、発症のきっかけ、症状の変化、個性、ライフスタイルなどにきめ細かく合わせた治療が必要です。そのために、丁寧な問診で患者さまの状態をしっかり把握することが重要です。当院では特に初診時に時間をとって生活環境と変化、気がかりや不安なこと、お悩みの点などについてもしっかりうかがっています。
治療は、最も大切な心と身体の休養を基本に、漢方薬や西洋薬による薬物療法をおこない、休息や休養、心理療法なども考慮したうえで患者さまに合った治療をご提案しております。また、御希望の方でTMS治療の適応がある場合には、専門医師が施行いたします。
休養と休養
身体的な疾患でも休養は治療に欠かせませんが、うつ病の治療でも休養が重要になることがあります。うつ病は真面目に努力する方がなることが多く、休むことに罪悪感を持つケースがありますが、医師が休養をすすめる場合には、思い切って仕事・学業・家事・育児・介護などを休んでください。自宅療養では休みにくい場合には、入院することもひとつの方法です。ただし、全員が休養して改善するわけではなく、休養しない方がいい場合もありますので、必ず医師と相談してください。
心理療法
医師などと対話を重ねながら問題解決の方法を一緒に考えていく治療法で、ストレスの影響が強い場合に効果が見込めるとされています。主におこなわれている認知行動療法では、物事の捉え方である認知や行動について考えることで思考や感情の歪みを理解し、気持ちのコントロールにつなげます。
薬物療法
症状を改善し、良い状態をキープして再発予防するために処方されます。効果が実感できるまで数週間から数か月かかることがあり、症状が改善しても減薬や休薬で再発しやすいので、状態を慎重に見極めながら処方します。抗うつ剤、抗不安薬、睡眠導入剤など、状態や症状、お悩みの内容、ライフスタイルなどにきめ細かく合わせた処方が必要であり、状態を観察しながら処方料などを微調整して最適な処方にしていきます。
当院では患者さまの状態に合わせて漢方薬の併用や、漢方薬中心の処方もおこなっています。
西洋薬・漢方薬も医師の指示を守ってしっかり服用することが重要です。効果や副作用など、気になることがありましたら診療時間内に電話で御連絡いただくなど、できるだけ早く医師に御相談してください。
TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)
うつ病やうつ状態の患者さまに対して、電気生理学的治療により脳機能の改善を図り、症状の改善、再発の防止を図ります。当院では、患者さまの御希望があり、治療に適応している場合は積極的に取り入れております。治療内容は、頭皮表面に機器を当て、大脳皮質のターゲット部位に有効的な刺激を加える事で、脳血流の改善と神経細胞の活性化をうながします。2008年頃よりアメリカで実証され、アメリカ保険局FDAから治療選択肢の一つと認められた安全な治療です。日本でも、近年厚生労働省では登録医療機関で特定の機器での入院治療のみ保険適応とされております。海外では基本的に通院治療となりますが、日本では診療所で自費診療のみ、通院治療が可能です。およそ30回程度の施行を繰り返すことで西洋医学的薬物療法と同等以上の効果が得られると言われています。
心臓ペースメーカや血管ステントなど体内機器の挿入をされている方や、てんかんなどの持病をお持ちの方、意識消失歴や脳挫傷歴のある方、妊婦の方や未成年の方(18歳以下)、希死念慮がある方、双極性障害の症状がみられる方などは適応外となる場合がございます。御希望の方はまずは当院まで御相談下さい。
御来院いただいた後の注意点
しっかりと心身を休めることが重要です。心を休めるために重要なのは、解決法がないことをあまり考えないことです。また、気分転換しようと無理に外出してしまうケースもありますが、気力や体力を消耗して逆効果になることも少なくありません。無理をせずに休むことを優先してください。
症状が改善して、患者さまが自己判断で内服を止めてしまい、再発してしまうケースが少なくありません。当院では、最適な効果を得られる最小限の処方を心がけており、処方する薬の量は患者さまの状態を見極めて出しています。服用する薬の量、回数、服用タイミングといった指示通りに服用いただくことで効果が期待できますので、必ずしっかり守って服用してください。